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飲酒運転の罰則が強化されたという。酒酔いは「3年以下の懲役、50万円以下の罰金」、酒気帯びは「1年以下の懲役、30万円以下の罰金」という、なんだか文字を見ただけで背筋が凍りつくほど恐ろしい罰則となった。
しかも同乗者まで罰金を課せられるというのであるからまたやっかいだ。自分のせいで他の人たちにまで多額の出費を被らせてしまったという罪悪感を与え、人間関係に亀裂を生じさせるような精神的苦痛まで強いられるわけだ。
それにしても飲酒運転以上に危険な運転だってあるではないか。それに対して何の法的措置を施していないことのほうが問題ではないのだろうか。
くしゃみ運転だ。
運転している時のくしゃみほど危険なものはない。くしゃみをするとハンドルを握る手に振動が伝わり、その勢いでハンドルがぶれ、車の走行に影響を及ぼし、相当危険な状態に陥る。しかもくしゃみの瞬間は目をつむってしまうため、その一瞬のすきに何が起こるかわからない。
前の車が急ブレーキを踏むことだってありうる。
サッカーボールを追いかけてチビっ子が飛び出してくることだってありうる。
重い荷物を持ったおばあさんが横断歩道で立ち往生してることだってありうる。
その道に不案内で地図を見ながら運転している森本レオ似の対向車が突然右折してきて、前を走っている車がその車に衝突し、その後ろから玉突きするってことだってありうる。
高校野球地区予選の決勝の朝、子供を助けようとユニフォーム姿の投手が飛び込んでくることだってありうる。その結果双子の兄が弟に代わって甲子園の夢をかなえさせるってことだってありうる。そんな野球部のマネージャーは新体操部と掛け持ちでも許される。そんな敏腕マネージャーは新体操を高校生から始めたのに、いきなりインターハイで優勝するのだって不思議でない。学校の生徒のほとんどが彼女を好きなのも当然だ。そりゃあ西村も新田のハートもがっちりキャッチだ。甲子園出場という過酷な難題を「南の夢を叶えて!」の一言で幼馴染みの双子たちに夢を植え付けられるのもうなずける。
そして連続くしゃみともなればその危険度はくしゃみの回数に比例して高くなる。
飲酒運転の罰則を例に取ってみよう。飲酒運転の罰則が呼気1リットル中アルコール量が0.15ミリグラム以上からであるわけだから、その最小の値をくしゃみ一回に換算する。すると連続くしゃみ3回は0.45ミリグラムに相当し、酒気帯びどころか酒酔い運転に相当するわけだ。その結果くしゃみ3回で3年以下の懲役か50万円以下の罰金、そして25点の減点を被り、2年以上の免許の取り消しとなってしまう。
恐ろしいではないか。実際こうした罰則は課されていないが、くしゃみはこれほど危険だということだ。くしゃみ1回で1秒間目をつむるとすると、くしゃみ3回で3秒間。3秒間もあれば車はいったい何キロ走ることができるだろう。車が時速180kmで走ってるとします。1時間で180kmだから、1分では180km÷60分=3kmでしょー。そうすると3秒では、3km÷60秒×3秒=0.15km。えーとー、だからー0.15kmってのは150m。ふー!はい、正解は150mね。
では、次の問題。ある電車は1800mのトンネルを1分36秒で通過します。また、この電車の2倍の長さで同じ速さの電車とすれ違ってから離れるまでには9秒かかります。この電車の長さを求めましょう。
正解は120m。
これまで星の数ほどある自動車事故の中で、くしゃみによって生じたケースだって絶対あるはずだ。ただその一瞬の状況でくしゃみをしたという事実を証明するのは非常に困難なことであるし、くしゃみによって事故を起こした本人も「くしゃみしたらぶつかっちゃいました」とは恥ずかしくて言えまい。事情聴取の書類にも「くしゃみによる前方不注意」と記述されるだろう。噂を聞き付けた知人たちからも「お前やっちゃったらしいじゃん、くしゃみ」とバカにされ、ご近所の奥様たちからは「近藤さんのご主人のこと聞きました?」「そうそう、くしゃみでしょー?」「しっ!聞こえるわよ!!あらー近藤さんこんにちは。大丈夫ですかーご主人?」「あ、え、ええ、まあ。何せあのー、…くしゃみですから」「!!…あ、あ、あら、やですわ!!おほほほほ…!じゃ、じゃあごめんあそばせ!」…と噂される日々が続くだろう。息子の大輔は「やーい!お前のとうちゃん、くーしゃーみー!」といじめられるのは明白だ。
こんなにまで事故と密接につながり、本人だけでなく多くの人々に苦悩の日々を強いるほどの危険分子であるくしゃみをこのまま野放しにしてしまっていいのだろうか。
飲酒やシートベルト未着用、免許不携帯などではそれなりの罰則が設けられているというのに、くしゃみだけがこうして未だに何の法的規制が為されていないとはなんという不始末。これこそまさに世に言う法律の抜け道というものか。
というわけで風邪であれ、花粉症であれ、胡椒のかけ過ぎであれ、誰かに噂されているのであれ、くしゃみをしやすい状態にいる運転者はそれを周りにアピールするべきだ。
そこでくしゃみが気になり出したら、自薦他薦問わず早急に警察署に申し出、そこでくしゃみ申告手続きを行う。すると若葉マークや紅葉マークのようなくしゃみマークのステッカーを渡される。それを車に張ることによって周りの車にくしゃみ警告を発することができ、くしゃみマークの車に対して、急ブレーキを踏んだり、サッカーボールを追いかけて飛び出してたり、重い荷物を持って横断歩道で立ち往生したり、その道に不案内で地図を見ながら突然右折したり、高校野球地区予選の決勝の朝、子供を助けようと飛び込んだりといった行為は全て違反と見なされる。そうすればくしゃみ事故はある程度回避できるはずだ。逆に言えばくしゃみマークの車が目に入ったらかなり慎重に運転しなければならないということだ。核燃料を入れたコップを手に持った、少々ご機嫌斜めの赤ん坊を車上に乗せている車と同じように気をつけなければいけない。
さて、ステッカーと言えばわけのわからないステッカーを貼った車をよく目にする。「赤ちゃんが乗ってます」や「Dog In the Car」など。これらを貼った車の後ろにつくと、誰もが「だから何?」ってつっこまざるをえない。
いったいどうして欲しいのかわからないが、とにかくそれを念頭に入れて運転してほしいということなのであろう。子供や犬が乗ってるんだから車線切り替えがうまくいかなかったり、Uターンを1回の切り返しでできなかったり、交差点のど真ん中で間違って止まってしまったり、料金所で寄せが甘くて車から降りて券を取ってたり、サービスエリアに入ったら間違って逆方向に戻ってしまった、と言ったミスも許してください、という意味も暗喩的に含まれているのであろう。
しかし実際にあのステッカーを貼ることによって何かメリットはあったのだろうか。通り過ぎる人々が温かい目で見送ってくれたり、お腹を空かせた犬のために窓からビーフジャーキーを投げ込んでくれたり、子供が飽きてぐずついたりしないようハリケンジャーショーが始まったり、ステッカーを貼っていないと体験できない素敵なことが起こったというのなら貼った甲斐があるというもんだが、実際そういったことがないとなると逆にデメリットが生じる気がする
赤ちゃんや犬が乗ってるとお知らせしている車を見れば、「どれどれ、どんなもんか見てみましょう」って覗いてみたくなるものだ。それが残念ながら眠ってしまって顔が見えなかったり、生憎その日は乗っていなかったりすれば、「なんだよ!期待させやがって!!」と思わぬところで悪態をつかれることだろう。
しかし犬を乗せた車同士が信号待ちなどで偶然隣合うと微笑ましい世界が生まれる。お互い犬好きという共通項を見出せただけでそこには犬不在車にはわからない同盟意識というものが生まれるのだ。しかし、その感情表現も人間が勝手に笑顔で手を振るぶんには一向に構わないが、寝ていた犬を無理矢理窓から覗かせたり、犬の手をもって振らせたりされては、せっかくなごんだ心も犬の気持ちを思うと悲しくなる。犬は感情を顔に表さないだけに、かえって同情してしまう。そして、犬の飼い主同盟の触れあいも始めのうちはいいのだが、なかなか信号が変わらなかったり、渋滞中に遭遇してしまったりして長時間に及ぶと、お互いどこでやめればいいのかと非情に気まずい状況になる。
交差点で知人と出会ってしまった時もそうだ。お互い面と向かっているのに距離があるため、さすがに大声で話すことはできず、かと言ってずっと見つめているのも気味悪いので、わざとらしくあたりをキョロキョロしたり、時計を見たり、鞄の中を探ったり、携帯をいじったりと、無意味な行動をくりかえし、かなり気まずい空気が流れる。そしてお互い心から信号が早く変わるのを願う。しかし広い交差点の場合、信号が変わったところで接近するまでの余計な時間もあるため気まずい空気はまだ続くことになる。
こういった気まずい空気を回避するためによく使われる手法は、先に気付いたほうが気付かないフリをして、ちょうどいい頃合いでのタイミングを見計らって、さもたった今気付いたというフリをして声をかけるというものだ。この場合限り無く100%に近い確率で相手も気付いていて、しかも気付かないフリをしているということも百も承知だ。ただ、そこはお互い気まずさを避けるためにそれについて触れることはタブーとされている。大人の社会はこうした無言のルールというものがあるのだ。
ふと小耳に挟んだ噂だが、近い将来、高速道路が動く道路になって車はその上で走らず停車していれば目的地まで運んでくれるようになるらしい。そうなると確かに渋滞などはありえなくなるし、事故も防げるだろう。しかし急いでいる車などにとっては迷惑きわまりない話だ。法定速度で走るパトカーを追い抜けず、後ろにズラーっと車が行列するようなもんだ。
とにかくそんな高速道路ができれば近未来な街っぽくなるはずだ。そうなるとタイムマシンがお目見えするのも時間の問題だ。車もタイヤがなくなって宙に浮いて移動するはずだ。
あ、そうすると動く道路はいらないね。
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